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顧客管理システムからひも解く経営戦略

一般に美容室ではお客様の情報を、様々な形で細かく記録しています。どんな髪型が好みか?とかどんな髪質か?というような情報から、好きな食べ物や好きな芸能人まで・・・積極的な美容室だと、実に何十項目にもわたる「顧客情報」を記録しています。この顧客情報のことを、「カルテ」と呼ぶのだそうです。
私が仕事で投げ年お世話になっているある美容室さんでも、色々なお客様の情報をカルテに記録していたのですが、数年前、手作業に限界を感じて、パソコンを導入することになりました。
その導入の時のお話。
お客様の情報として、パソコンにどんな内容を打ち込んで行けばよいかを、色々と検討して行く過程で、オーナーさんと何度も話し合いをしました。
好きな色、好きな音楽、趣味・・・色々な情報の項目を提案したのですが、こういう項目にはあまり色よい返事をいただけませんでした。ところが、色々進めていくうちに、ご家族の情報の事を提案し始めたら、「ご家族・・・特にお嬢様や息子さんのお名前と生年月日」を項目としてどうしても入れておきたいと言い始めました。
あ、そうか。お客様のご家族の事を知っていれば、ご来店の際に会話も弾むし、ご家族のお誕生日になにか贈り物を用意するとか、そんな気遣いもできるから、ね・・・と、私はそう考えて打ち合わせに望んでいたのですが・・・オーナーさん曰く、「そういう会話のために、ご家族の情報が欲しいんじゃないんです」とおっしゃる。
アレ?そうなないんだ。じゃあ、どうしてなんだろう・・・?と思って、色々その理由を伺ってみました。すると・・・
30代、40代くらいの女性のお子さんは、だいたい小学生~中学・高校生くらいの年齢層。数年~10年後位には、私の美容室のお客様としてちょうど良い年齢になります。その時に私のお店を選んでいただけるように、お客様ご本人だけでなく、ご家族の方へもアプローチしたいんです。それに、親子なら、髪質も似ていたりするので、将来お客様となったときに、ケアがしやすいんですよね。
このオーナーさん、多分これまでの経験などから自然とそういう風に考えるようになったのでしょうけれども、この意味には非常に深いものがあります。
単にそのお客様がどういう人なのかを知りたい、というためだけに顧客の情報をつかむのではなく、「自分の店が今後、どういうお客様を獲得し、どのようにケアをしていきたいか?」をきちんと見定めた上で、そのために知っておくべきお客様の情報はどんなものなのか?をきちんと考えられているなあ・・・と。
いえ、決してお客様の好みの色や趣味という情報を知る必要がないということではないのですが・・・
少なくとも、お店を繁盛させていくためにお客様の情報を色々集めるという時に、ただ「普通どんなお店でもこういう記録はとっておくものだから」と安直に考えずに、「どうしてこの情報を知っておく必要があるのか?この事を記録しておいて、あとでどういう風に役立てるのか?」を意識しておくことは、非常に大切です。
そして、「どういう項目を記録すればよいのか?」を、きちんと見定めるためには、「ウチのお店(会社)は、どういう事を大切にしていて、お客様に対してどんなサービス・どんなケアをして役に立とうとしているのか?」をきちんと決めておく必要があります。
自分のお店(会社)が、どういう事を重視して、そのようにお客様の役に立っていくのか?
これこそ、「経営計画」「経営戦略」の第一歩、ですよね。
顧客名簿を整理して、顧客情報管理システムを導入するという作業は、本気で取り組むと「単にIT化して効率を上げる」だけにとどまらず、「経営計画・戦略を一から見直す」という、非常に意義深い取り組みにも発展します。
また、それほど大げさな事ではなくても、「お客様のどんな情報を知るべきか?」と一度きちんと検討する事は、日常の顧客サービスの向上にもつながる事がたくさんあります。
今まで、お客様の情報は住所・氏名・メールアドレスくらいしか記録していなくて、年賀状ソフトや宛名ラベルソフトで年賀状やDMを送る時にしか使っていなかった、という経営者の皆さん、一度「顧客情報」の管理と整理をしなおしてみると、意外な発見があるかも知れませんよ?
「顧客管理システムの導入」というと、なんだかたいそうな事のように聞こえますが・・・要するにお客様の名前や住所や年齢をパソコンに記録して、有効活用しよう、というものです。けれども多くのお店や会社では、「年賀状やDM発送のための住所録」となってしまっていて、それなら「筆まめ」で十分じゃないか?と考えられている方も多いようです。
確かにそりゃその通りなのですが・・・一歩踏み込んで取り組めば、単なる「住所録」にとどまらない、大きな意味と価値を持つシステムにもなります。今回はその入口のお話。

手書きのカルテをパソコンへ

ご紹介するのは、ある美容室さん(ここではA美容室さん、としておきますね)の数年前のお話。

美容室ではお客様の「お名前」「連絡先」「過去のカットやパーマの履歴」「髪の毛の質」「お好みのヘアスタイル」などの情報を「カルテ」という書類に記録して保管しておくのが通常なのだそうです。

A美容室さんでも、過去のお客様2,000人程を、「カルテ」というB5サイズのカード型の書類に手書きで記録を取っていましたが・・・お客様の情報を管理する手間が大変になりはじめたこともあり、パソコンで管理しよう、ということになったのです。

初めは「筆まめ」みたいな年賀状ソフトで、住所と名前と電話番号とメールを登録・・・のような話をしていたのですが、それじゃあお客様のヘアスタイルとか、過去のカットの履歴とかを見ることができない、ということで、ちゃんとした「顧客管理システム」を導入することになりました。

項目が自由に設定できる

顧客管理システムの特徴は、「項目」がある程度自由に設定できるという点

筆まめなどの住所録管理・年賀状ソフトでは、お客様の住所・電話番号・メールなどの連絡先とちょっとした情報しか記録できないのに対して、顧客管理システムでは、かなり自由に項目を設定できます。例えば・・・

「髪の毛の質(硬い・柔らかい・くせ毛など)」「髪の毛の量」とか、「好みのヘアスタイル」など・・・

また、単にそのお客様の現在の情報だけでなく、「いつ来店した」とか「前回のカットの内容」とか・・・また「カットのあとお直しをした」とか・・・そういう「履歴」も記録することができます。

項目が自由に設定できるなら、今まで手書きで書いていたカルテと全く同じ内容を、パソコンに入力できる、ということで、早速導入を進めました。

導入を進める過程で分かったオーナーさんの考え

顧客管理システムは、運用し始めれば、意外に簡単な操作で管理ができるんですが、導入の最初の部分はある程度専門家のアドバイスが必要になります。そこでA美容室さんと私とで色々打合せしながら導入を進めさせていただきました。

導入とは・・・項目をどんなふうに設定するか?が主な作業。

  • 名前は?「姓」と「名」を別にする?
  • お勤め先は入力できるよう設定する?
  • 髪の毛に関する情報はどんな項目を入れる?
  • 身長・体重・スタイルなどの情報も入れられるようにしておく?それとも設定しない?

などなど・・・

そんな風に進める中で、A美容室のオーナーさんからこんな事を要望されました。「30代・40代の既婚の女性の場合、お子さんの名前や年齢・誕生日を入れられるようにしてもらえないかしら?」

もちろんこの要望は項目設定の作業で簡単に設定できるので、OKして進めたんですが、当初私は、「お子さんの情報があれば、接客の時の会話や応対に利用できるから、ね」と、そういう理解をしていたのです。が・・・オーナーさんの考えはそうではありませんでした。

オーナーさん曰く

「30代・40代の女性のお子さんということは、多分20代より下の子が多いでしょう?ということは、その子たちは数年たつと、私のお店のお客様としてアプローチできる年齢になるんですよね。そのお客様を重点的にケアしていって、何年来のお付き合いの超VIPなお客様になっていただければ、数年後にはそのお子さんたちも有望なお客様として取り込めるんです」

つまり、このオーナーさんが「お子さんの情報」を欲しがっていたのは、単に「お客様本人との会話をスムーズにする」ためではなく、「潜在的なお客様」がどこにいるかを掴むための手段の一つとして考えていたから、なんですね。

顧客管理システム上の情報としては、「子供の名前」「年齢」「性別」などを入力するだけなので、変りはないのですが・・・その情報を、どう活用するつもりなのかによって、意味合いや位置づけがガラリと変ります。

それから数年後の現在

その後、そのお店がどうなったかというと・・・「お子さんの年齢やお名前」を記録した方の全てではありませんが・・・一部のお客様は、お子さんまでがA美容室に通うようになり、結果的に家族全員がその美容室のお客様になっているのだそうです。

もちろん、単に「お子さんの名前と年齢を記録していた」だけでそうなったわけではなく、その他の様々なお客様の情報や過去の履歴を、様々な形で分析し、解釈しながら、お客様別にアプローチを変えたり、ある時期だけ重点的にDMを出したりなどして・・・ひとりのお客様の情報から、どんどんお客様の数を広げていったのです。

お客様の何を知って、どう活用するか?

単に住所と名前と電話番号を記録する、というだけではなく、様々な項目を入力することのできる顧客管理システム。

ともすると、その機能の豊富さゆえに、やたらめったら項目の数を増やして、入力しまくるんだけど、あとから良く考えてみたらなんにも役に立たない情報だった・・・なんてことも多々あります。

顧客管理システムを導入・運用しようとすれば、必ず「どういう項目を、どのように入力していくか」を考える事になります。

そして、それを考えると言うことは、イコール、「お客様のどういう情報を記録しておいて、それを後でどんなふうに活用するのか?」を考える事になります。

お客様の何を知って、どう役に立てるのか・・・?それをきちんと考えれば考えるほど、最終的には「自分のお店(会社)は、お客様に対してどんなサービスを提供し、どう役に立つのか」を模索していく作業につながっていきます。

こんな風に、顧客管理システムを導入して運用するということは、漫然と進めずに、しっかりとした考えを持って進めることによって「経営そのもの」を見直すチャンスにも成り得るのです。

個別具体的なご相談・解説が必要な方は、パソコン相談所で承ります。どうぞ御気軽にお問い合わせください。

 

 

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