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事業ドメインの確認・転換
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- 最終更新日 2012年2月11日(土曜)09:11
このページでは、「事業ドメインの確認」および経営戦略上の「事業ドメインの転換」について、具体的な事例を元に解説いしていきたいと思います。手前味噌で大変恐縮ですが、2006年に私どもパソコン相談所が実施した事業ドメインの確認および転換についての経緯を事例に解説させていただきます。
■経緯(前提要件)
以下で説明している事例は、パソコン相談所(個人事業主なので、イコール私「岸本」と言い換えても構いませんが)が2006年の年末ころに実施した事業ドメインの確認・転換・SWOT分析などの一連の経営戦略策定の中の一部です。
パソコン相談所は、2002年3月より事業を開始しました。事業開始から5年弱が経過した頃に、今後の仕事の方向や成長の方向について、きちんと系統立てて検討しようということで取り組んだのが、「BSC(バランススコアカード)」手法による経営戦略の立案でした。以下の事業ドメインの確認・転換の検討の経緯は、その時の内容を踏まえて解説しています。
■事業ドメインとは?
「どのようなお客様の」「どんな期待(ニーズ・要望)に」「自社のどのようなノウハウ・強みを活かして、如何に応えているか?」を検討した上で定義付ける、「事業価値」のことです。言い換えれば、「なぜウチの会社が事業体として存在して、収益をあげられているのか?」を説明するもの、あるいは「ウチの会社が立っている立ち位置」のようなものともいえます。
会社が存続して経営できている限り、そこには
- ウチを選んでくれるお客様がいて
- それら客様からの要望があって
- それに対して他社ではなくウチでなければならない理由
があるはずです。
競合・ライバル・目の上のたんこぶがゴロゴロ存在する中で競争し合いながら、ある程度の個客を獲得できているわけですから、それがどういう立ち位置で、どういう状況なのか?を知ることが、今後の経営力をアップしていくための大前提となるわけです。
そういう観点から、「事業ドメインを確認する」ということは、経営上の戦略や展開を考える上で、非常に重要な「経営戦略立案上の必須作業」ということになります。
パソコン相談所も2006年に、この考え方に立脚して事業ドメインの確認と転換を検討しました。
右上の図と、以下のドメイン分析の図はこちらからPDFでダウンロードできます→事業ドメイン分析~パソコン相談所
■パソコン相談所の「現在の事業ドメイン」検討
2006年当時のパソコン相談所の「現状の事業ドメイン」は、以下のようなものでした。
これは、2002年の開業時から2006年当時までの約5年弱を振り返って再確認した内容です。
ここでそもそも、考え違いをしてしまうと命取りなので要注意を。この再確認の結果の中には、「こうだったら良いなぁ」とか「そもそもウチの会社はこうあるべきだ」というような希望や将来像は一切含んではならない、ということです。この分析は、あくまで過去から現在までがどうだったかを、良くも悪くも徹底的につまびらかにすることが目的です。
現在の顧客について
- 当時のパソコン相談所の顧客名簿に掲載されている顧客(法人・個人合わせて約300客)を、ひとつひとつ全部確認していきました。
- ひとつひとつの顧客の、年齢(年代)・住所・サポート内容・仕事(業種)・法人の場合の従業員数・PC知識やスキルなどを全て洗い出し、Excelを使って集計したものが上記の内容です。
ニーズについて
- 個別の顧客への対応の履歴・サポート業務の履歴・サポート後の感想や評価などを、これも全てExcelへ書きだして集計し、上記の内容にまとめました。
- 履歴には記録しなかったものの、お客様との会話の中で印象に残った感想や要望、世間話なども思い起こしながらまとめています。
独自能力について
- 自分の能力を、まず7つほどの分野に分けました(「仕事への意欲」「自信の度合い(あるいは逆の自信のなさ)」「パソコン・ITに対する知識」「パソコン・ITに対する具体的な技術」「パソコン・IT以外の分野の知識・技術」「接客・応対に対する能力」「金額・コストに対する優位性つまり安い・割安感(あるいはその逆の劣位性、つまり高い・割高)」)
- 5年間の全てのサポート業務について、上記7つの能力要素のうちどれが該当したのか?をひとつひとつ検討しました
- その結果、自分の仕事ぶりとしては、この部分が他よりすぐれている(筈だ、という自己理解にとどまりましたが)を取りまとめたものが上記の内容です。
事業価値について
上記の3要素を徹底検討した結果、出てきた答えが「個客に対して必要なサービスを提供して等身大の活用を促す」という事業のあり方でした。(この答えの中に、「短時間で効率よくサポートをこなしていく」という要素は、全く含まれていなかったのが驚きです)。また、開業後2~3年以内に潰れてしまうことの多い業界の中で細々ながらも継続できている理由を、「低価格提供ながら、一定の収益を確保できている、小規模経営ならではの優位性」と結論づけました。
補足説明
一般的なパソコンサポート・ITサポートという業種は、なるべく多くの方の様々な「パソコン設定」や「パソコントラブル」を、効率よく短時間でパッパと解決していくことで、個客回転率を高めて売上を上げていく、というのが定石的な経営手法でした。2006年当時、正直を申しますと私自身も、分析前までは「これだけ忙しく動き回っているからには、やっぱりかなりの客数をかなりの回転率で効率よくやっているということが強みになっているはずだ」と自己理解していたのですが、実際に資料をひとつひとつ検討していくと、全く逆だということが分かりました。(当時の私にとっては、この現状分析だけでも十分すぎるほどに価値のある分析結果となりました)
この時点で、将来の事業ドメインの取り方、方向性はある程度決まったようなものでした。現状分析だけで、少なくとも次の二つのことがいとも簡単にハッキリとわかったからです。
向かうべき方向
具体的な事業戦略・メニューはともかくとして、必ず「個別の顧客に十分な時間と労力をかけ」、「ひとりひとりのお客様とそれぞれ固有のパートナーシップを結ぶ」という展開の仕方をしていくべきだ、ということ。また、「顧客の求めること対して全方位的に全て答えられるような広く客観的な経験とノウハウを積み重ねる必要がある」ということ。
踏み込むべきではない方向
短時間で効率よく、ズバズバと仕事をこなしていくスタイルの事業展開をするべきではない、ということ。また、非常に狭い範囲でのパソコンやITの技術知識やノウハウだけを集中的に会得して、それを提供するという方向では、ウチの場合は顧客が付いてこないということ。
■パソコン相談所の「未来の事業ドメインの検討」
現状分析をうけて、では今後の展開については?ということで、今後の未来の事業ドメインについてどう捉えるべきかを検討した結果が、以下のとおりです。
ここは現状分析とは異なり、「まだ出来ていない、これから取り組むべき未来像」ですので、希望的観測や、こうあるべきだという内容が盛りだくさんになりました。ただし、どの要素についても、現実に存在する(あるいは確認できる)顧客像やニーズを書いていく事が必須です。
きっかけは「独自能力」の変化
私(岸本)は、2006年春にITC(ITコーディネータ)という資格を取得しました。これは、ITの専門知識と、経営についての専門知識の両方を持ち合わせ、なおかつ効果的にITを経営戦略に活かすことのできる調整力・ノウハウを要求される資格で、当時静岡県東部地域でこの資格を保有している個人事業主は、私ひとりだけでした。
独自能力がかつての「個客対応」「IT業界出身ではない」というような消極的な要素から大きく変化したことと、経験の蓄積によるノウハウが充実したことで、答えられるニーズと、そのニーズを持つ個客が変わってくるとの認識があり、上記のような内容になったというわけです。
■事業ドメインを変更したことで何が変わったか?何が変わらなかったか?
事業ドメインを「PC・IT活用の提案」から「企業経営の支援・パートナーシップの提供」へ大きく変更したことで、変わったことは二つありました。
宣伝・PRのチャネルと方法
ドメイン転換以前の「現状」の状態の時には、「タウンページ広告」と「チラシ」「名刺」に最も力を入れていました。ホームページ・ブログなどは、ほとんと全くと言って良いほど、何も手を付けていませんでした。「PC初心者・経験の浅い方」という顧客像、「PC以外の広範なアドバイス」というニーズからすると、ホームページに「PCサポート・指導いたします」と書いても、それを見て申し込んでくれるお客はウチの場合ないだろうと考えたからです。
ドメイン転換後は、この点を大きく変更しました。PC初心者を対象にした「設定サポート」中心から、「PC活用をより進めたい」という企業へのアピールが必要になるわけです。この点を踏まえて、タウンページ広告を廃止し、チラシを作成することをやめました。代わりに、ホームページ・ブログでのPRを開始。また、「継続的なパートナーシップ」というニーズに答えるために、定期的なDM・メルマガを開始しました。
アドバイスと提案のスタンス
個別のお客様への支援・サポートの際に、それまで「パソコンの設定」や「より便利な使い方」についての助言・アドバイスを行っていたのを変更しました。変更後は、「今回の設定やトラブル解決が、お客様のTCO(TotalCost of Ownership)にどれだけ貢献するか?」「現状のIT活用をより経営に役立てるためには、今後どのようにすればよいか?」を、お客様目線の言葉と考え方で解説をしていく、というスタンスに切り替えました。
変わらなかったこと・・・「顧客」と「サービス内容」
市場へのPRの方法・サポート時の補足説明(アドバイス・提案)は大きく変化しましたが、結果的に、「お客様」はほとんど変わることはありませんでした。(徐々に数は増えたが、今までパソコンのサポートしかしなかったお客様が、お客で無くなったかというと、そうではなく、引き続き顧客として残ってくれた)。
また、「単なるITサポート」から「経営支援へ」というシフトを掲げたとはいえ、具体的に日々売り上げているサービス内容は、転換以前とほとんど変わっていません。(パソコンの設定・トラブル解決、ホームページ制作、ソリューション提案など)
・・・なんだ、お客様も相変わらず同じ人で、やってることも変わらない、それなら、何のために事業ドメインなんて大げさなことをやったのか?・・・そう疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが・・・実際には大きな変化がありました。それは・・・
■お客様の側で変わった事
何でも相談されるようになった
これまで、パソコンの事でしか呼ばれなかったお客様から、パソコンのこと以外で呼ばれる機会が増えたのです。例えば「就業規則を作りたいんだけど、どう思う?」とか「商品PRをしたいんだけど、どうやったらいい?」とか・・・またあるいは「紙媒体の広告を出すのに、こういう原稿作ったんだけど、どうかな?」などなど・・・。結果、顧客リストはたいして変わっていないのにも関わらず、私の請け負う仕事の量と種類は、だいぶ多くなってきました。
大手を疑ってくれる
これまで、パソコンの設定のことだけで呼ばれていたお客様から、「ホームページリニューアルしたいんだけど、業者に頼んだらだいぶ高いんだよね。これ、一般的な相場からしたら、どうなの?」というような相談を持ちかけてくれるようになりました。大きな機器の買い替えや、ホームページの全面リニューアル、システムの入れ替えなどの話になると、いつも大手のIT企業に取られてしまっていた話が、こちらへ振り向けられるようになったというのは、大きな変化でした。
■結果的に、売上・収益構造が変化
さすがに売上の詳細まで公開はできませんが・・・(^^;)
上記のようなドメインの転換により、2007年後半ころから、売上の内訳が大きく変化してきました。掻い摘んで言うと、「PCの技術的なサポート」の売上比率が減り、それ以外の分野が上がってきたのです。
売上の総額としては、それほど大きな伸びにはなっていませんが、相対的に「PCサポート」売上主体から、「IT活用支援」「経営支援」の売上にシフトしてきたことは、2006年の現状分析からスタートして事業ドメインの転換のひとつの成果となりました。
■事業ドメインを徹底検証する意味
今回の解説では、「現状の事業ドメイン分析」から「未来の事業ドメインの策定」へ至る経緯を詳しく書くことが出来ませんでしたが、「未来の事業ドメイン」を描く際の非常に重要な目安となるのが、「現状の事業ドメイン分析」です。
現状の自社の立ち位置をキッチリ把握することで、将来像を描くときに「向かうべき方向」と「絶対に踏み入れてはならない方向」が、自ずとハッキリしてくるからです。
経営に携わる方にとって、「ウチの会社の将来」を描くということは、非常にお大きな責務・重圧でもあると同時に、やりがいのある愉しみにもなり得ます。
ただ、「将来のビジョンを描く」ことが、なんだかとても前向きな話のように思えて、何でもかんでも戦略つくってビジョン描いて・・・なんてことをやたらとやりたがる経営者さんが多く、その割に「結果、なにも変わらない」とか、あるいは「経営が傾いた」などということが多いのも事実です。
こういう「結果的にうまく行かない」経営戦略は、殆どの場合「現状をきっちり把握していない」ことが原因です。
描くだけなら、夢想家なら誰でもできます。けれども、「きちんと現状把握して、向かうべき方向を見定め、向かってはいけない方向から舵を切る」には、徹底的に地道な「現状分析」が必要になる、というのが、私達ITCの共通認識であり、最大のノウハウです。
言い方を変えれば、徹底的に現状分析できて、自社の立ち位置がわかれば、あとは黙っててもビジョン・戦略・展望がみえてくる、と言っても過言ではないと、私は考えています。
さて・・・この記事をお読みになっている経営者の皆さん、どうでしょうか?
あなたご自身は、自社の事業ドメインについて、きっちり把握できていますか?
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